人×旅×道産品 エピソード
第2回の旅 「丘のまち」美瑛町(びえいちょう)で、農業景観とともに歩む人々に出会う旅
「人×旅×道産品」では、旅の切り口から、道内生産者や道産品との出会いのストーリーを連載していきます。
北海道百科と同じ道内企業の仲間で、北海道の楽しみ方を隅々まで探求されている「株式会社北海道宝島旅行社(https://hokkaido-takarajima.com/)」さんのご協力で連載して参ります。
「旅」から見る北海道の「食」もよし。「食」から入る「旅」もよし。
とにかく、記事を通じて空想の世界でディープな北海道旅行を楽しんでみてください。
そして、体感したくてムズムズしたら、下記リンクからツアー企画をのぞいてみてくださいね!
旭川空港から車で約15分、ラベンダー畑や有名ドラマの撮影地である富良野エリアのお隣にあります。今回はどんな人々に出会えるでしょうか。
丘の景観が毎年200万人を魅了する美瑛町
美瑛町は、北海道のほぼ真ん中、旭川空港から車で約15分、旭川駅からも車で約30分という立地にあり、東京23区と同じくらいの面積に、1万人弱の人々がゆったりと暮らしています。面積の70%以上は山林が、約15%を農地が占めており、これらの産業が、パッチワークのような美しい模様を描く「丘のまち」の景観を形作っています。
近年、この丘の農業景観や「青い池」などを目指し、年間200万人もの観光客が訪れているというから驚きです。
多くの人々を魅了する、美しい丘の景観の秘密を探りに行ってきました。
コースはお好みで!プライベートガイド付きサイクリングツアー
美瑛駅に到着したら、三角屋根のかわいらしい歩道橋を渡ってロータリーの隣にある、『Guided Cycling Tour 美瑛』へまっすぐ向かいます。ガイドデスクのある小屋の前で、オーナーの三島忍さんと、この日のガイドである冨田明さんが迎えてくれました。
「今日はよく晴れていて、暑すぎもしないので絶好のサイクリング日和ですよ!」
オーナーの三島さん(右)と冨田さん(左)。冨田さんは英語でのガイドも担当しています。※顔写真撮影の時だけマスクを外していただきました。
自転車がずらり!電動アシストの使い方を習ったあと、周辺を軽く試走させてくれるので安心です。
デスクで注意事項などをしっかり聞いたら、この日のコースを決めます。時間内であれば、お客様の希望に応じて好きな場所を巡るコースも設定してくれます。美瑛を知り尽くしたサイクリングガイドさんと一緒に行くプライベートツアーだからこその特権ですね。
さて、協議の結果、今回は国道を挟んで西側の「パッチワークエリア」へ向かうことにしました。自転車はなんと電動アシスト付き!「美瑛の丘を初心者でも楽しく走るためには、電動じゃないとね」と三島さん。この威力を後ほど実感することになるのです……!
どうです、走り出して5分でこの絶景です。
すでにこの時点で60メートルほど坂道を上っていますが、息切れどころか座ったままスイスイと走ってくることができました。電動アシストすごい。
冨田さんは、ただ走るだけでなく、畑に植わっている作物や途中にあるポテトチップの原料倉庫などの前で説明を加えてくれます。
取材に伺った6月中旬は、青々とした小麦の穂が出始めるころ。品種や植えた季節によって姿がまったく違っていてとても興味深いです。農作物の詳しいお話は、午後の畑ガイドさんからお聞きしましょう。
有名な「ケンとメリーの木」や「セブンスターの木」などの前を通り抜け、有名レストラン『bi.ble(ビブレ)』の美瑛産小麦のパンを購入して丘の上でおやつタイム。遠くの丘の作物が何かを当てっこしたり、羊の放牧地に立ち寄ってジェラートに舌つづみを打ったり。地図にないような秘密の丘も走って、あっという間に2時間(半日コース)が過ぎてしまいました。
ガイドデスクに戻って、迎えてくれた三島さんに筆者が発した第一声は「半日コースじゃぜんぜん足りな~い!」
ぜひ皆さん、美瑛でサイクリングを楽しむなら、まるまる一日ガイドさんと一緒に走ることをお勧めします!
農道がほとんど。農作業のお邪魔にならないよう、譲り合って。
クマゲラの空けた穴がこんなに!
美味しいカフェやアイス屋さんも点在しているのでつい立ち寄っちゃうんですよね。
角度を変えると面白い写真が撮れるかも。筆者の今回お気に入りの一枚。
店舗情報 | Guided Cycling Tour 美瑛 |
住所 | 北海道上川郡美瑛町大町1丁目1-7 (美瑛駅裏) |
営業時間 | 8:30 ~ 17:30(営業期間 5月1日 ~ 10月31日) |
TEL | 090-5956-4567 |
URL | https://field-north.com/biei |
森と花に囲まれた小さなパン屋さんでランチタイム
程よく運動した後のランチは、人気のパン店へ。美瑛町の南側の美馬牛(びばうし)にある『小さなパン店 リッカロッカ』です。白樺並木の間を通る小道を入っていくとかわいらしい店舗が見えてきました。やわらかく陽光が差し込む店内には、一つずつ丁寧に作られた、美瑛産小麦を使ったベーグルやパンがちょこんと並んでいます。
現在は、新型コロナウィルス対策のため店内飲食を中止していますので、テイクアウトしたあとは店舗裏手のお庭でいただくのもおすすめ。一面に花畑が広がり、ブランコやハンモック、ベンチがところどころに置かれています。おひとり様のお客様ものんびりと風に揺られながら、店主の市川さん夫妻が作った味わい深いパンを楽しんでおられました。
滋味あふれるパンで元気をもらったら、次は農家さんに会いに行きましょう。
クランベリーとクリームチーズのベーグルと、チョコレートとバターのリュスティック。ドリンクは絶対飲むべし!ハスカップミルク。
こんなところで腰をおろしたら根っこが生えちゃいます…
店舗情報 | 小さなパン店 リッカロッカ |
住所 | 北海道上川郡美瑛町美馬牛南1-5-50 |
営業時間 | 10:00~15:00(売り切れ次第閉店) |
定休日 | 4~11月:日、月曜 12~3月:日、月、火曜 |
TEL/FAX | 0166-73-4865 |
URL | https://likkalokka.seesaa.net/ |
許可を得た専門ガイドと一緒に、農家さんの目線で美瑛を見る
午後は、丘のまちびえいDMO所属のマスターガイド、小倉博昭さんと一緒に、農家さんの畑を訪れました。2018年から提供しているこのプログラムは、敷地内に入ることを許可してくれる農家さんと、DMOやガイドといった、農業と観光の相互理解があって成り立つものです。
美瑛町では、「オーバーツーリズム」といわれる状態が長年続いており、年間200万人も訪れる観光客と、この地で暮らしを営む農家さんや住民の方々との間にトラブルが起きることがしばしばあります。何より困るのは、美しい景観に夢中になりすぎて、農地へ入り込んでしまう観光客が少なくないことでした。
もちろん農地は私有地ですし、農家さんの仕事場ですから、無断で入ってはいけません。恐ろしいことに、私たちの靴の裏などに潜む細菌が農地に入り込み、農産物をすべてダメにしてしまうこともあり得るのです。実はこの被害は全道的に広がっており、最悪の場合、農家さんは農業をやめなくてはならなくなる可能性もあります。
看板があっても、夏でも冬でも、畑への無断侵入は後を絶ちません。丘のまちびえいDMOではこのような画像を集め対処に取り組んでいます。(画像提供/丘のまちびえいDMO)
そこで美瑛町では、日々の暮らしを持続させるために、町を挙げていろいろな努力を重ねています。
このガイドプログラムも、その取り組みの一つ。
許可を得た畑に、専門ガイドと一緒に入ってもらい、“なぜ農地に入ってはいけないのか”“自分たち美瑛人がどういう想いでこの土地を守っているか”を、観光客に伝えることを目的としています。
実は、私たち北海道宝島旅行社もこのプログラムづくりに関わらせていただき、ずっと応援してきました。ですから、ぜひ皆さんにも体験していただきたい1本です。
農場主の大波太郎さんが出迎えてくれました。
丘のまちびえいDMOマスターガイドの小倉さん。ガイド歴25年以上のベテランです。
専用の長靴を履いて、石灰で靴底を消毒。靴についた雑菌を畑に持ち込まないための予防策です。
ガイドの小倉さんと合流したら、まずは装備を整えます。
きれいに洗った専用の長靴を履き、石灰で靴の裏を消毒します。麦わら帽子をかぶったら、いざ出発!
開拓のためにこの地に入った際に建てたという建物や、大型農業機械の間を抜けて畑に向かいます。ここでも丘を登っていきますが、午前中の電動アシストが恋しくなるほどの急坂です……。
しかしその坂を登りきると、この景色!
目の前には、小麦や豆(大豆や小豆)、砂糖の原料となるビート(てんさい)、とうきび(とうもろこし)、じゃがいも、牧草などなど…
パッチワークの丘を彩る農作物たちが広がる、360度の大パノラマ! その奥には旭岳や十勝岳などの大雪山国立公園の山々がドーンと鎮座しています。美しい畝の間を赤や青のトラクターがせわしなく走り回っていたり、農家さんが雑草取りをしている姿がぽつぽつと遠くに見えたりと、まさに「生きた農業」が目の前で繰り広げられています。
大波さんが斜面の作物の間に入り手入れをしていました。
小麦の花が咲いていました!この季節だけの貴重な姿です。
大波さんのお父さんがトラクターで登場!
畑の途中にある大きな溝、通称「大波キャニオン」のそばで、お父さんが思い出を語ってくれました。
「美瑛を含む畑作を行う地域では“輪作”といって、畑の中で4種類程度の作物を順繰りに植え替えていきます。土の中のミネラルバランスなどを考慮して、農家さんがそれぞれに工夫しています。来年も同じ場所に同じ作物が植えられるとは限らない。ですから、今ここから見える景色は今年だけのものなんですよ」
美瑛のパッチワークのような美しい農業景観を作っているのは農作物の色彩であり、それを育む農家さんたちの営みがあってこそ。この美しさがずっとずっと続くよう、私たち観光客も訪問地のことを理解することが必要なのですね。
終了後は、美瑛ファームのソフトクリームでクールダウン。小倉さんのガイド付きです。靴を消毒したうえで牛の近くにも行けますが、牛には構ってもらえませんでした。残念!
店舗情報 | 美瑛ファーム 美瑛放牧酪農場 |
住所 | 北海道上川郡美瑛町字新星平和5235 |
営業時間 | 5~10月 10:00~17:00 11~4月 10:00~16:00 ※定休日なし |
TEL | 0166-68-6777 |
URL | https://biei-farm.co.jp/ |
美瑛の農産物や加工品が一堂に!畑のお土産を手に入れよう
旅の最後は、畑から生まれた美味しいものをお土産にしたいと、『美瑛選果(びえいせんか)』を訪れました。JAびえい直営の農産物・加工品の直売所です。新千歳空港限定で販売されており、入手困難な「びえいのコーンぱん」も、この美瑛選果の商品なんですよ。
取材した6月中旬はアスパラガスの最盛期!美瑛町でしか栽培されていない「ラスノーブル」という品種のアスパラを購入しました。
「もともとホワイトアスパラガス用だった品種を、グリーンアスパラとして栽培しているので、とっても柔らかくてみずみずしいんです。ただ、その分曲がりやすいなど、農家さんにとっては育てにくいというデメリットもあり、失われそうになっています」と、丘のまちびえいDMOの泉さん。
現在、「ラスノーブルの苗を復活させよう!プロジェクト」も実施されています。
詳しくはこちら(https://town.biei.hokkaido.jp/furusatonouzei/)をご覧ください。
素晴らしい景色と、学びもある楽しい体験プログラムを満喫し、今回も大満足で帰途につきました。
幻のアスパラガス、ラスノーブル。みずみずしくて美味しい!美瑛選果「選果工房」で通年提供しているフレッシュイチゴジュース(右)もおすすめです。
店舗情報 | 美瑛選果 |
住所 | 北海道上川郡美瑛町大町2丁目 |
営業時間 | 9:00~18:00(6~8月の場合)※定休日なし |
TEL/FAX | 0166-92-4400 |
URL | https://bieisenka.jp/ |
※美瑛本店には、各種ショップ、レストランが併設されています。
各店舗、期間によって営業時間や定休日が異なりますのでウェブサイトでご確認ください。
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※情報は、2021年6月末日現在のものです。
※新型コロナウイルス対策のため、営業時間等が変更になる場合があります。
農業と観光客をつなぐ「畑看板プロジェクト」
最後に、読者の皆さんにもぜひ考えていただきたいことをご紹介しておきます。
美瑛の丘を走っていると、こんな看板を見かけることがあります。
これは、「畑看板プロジェクト」といい、地元の農家さんたちが始めたものです。
立入禁止の看板はありますが…
トラブルはありつつも、自分たちが愛する美瑛をともに愛してくれる観光客を、追い出したいとは農家さんたちも考えてはいません。お互いを思いやり、素晴らしい美瑛を子どもや孫たちの世代にも残したい――そこで生まれたのが、このプロジェクトでした。
看板は、プロジェクトに参加している農家さんの畑にご自身の手で立てられており、二次元バーコードを読み取ると、ご本人のウェブサイトなどに飛び、思いを直接知ることができます。
詳しくは、丘のまちびえいDMOのホームページをご覧ください。
今回の体験プログラムの一部は、(一財)丘のまちびえい活性化協会/丘のまちびえいDMO「Be my BIEI」で提供しています。ほかにも美瑛町を堪能できる四季折々のコンテンツがありますので、ぜひ覗いてみてください!
美瑛・パッチワークの丘“畑 DE フットパス”
URL:https://h-takarajima.com/detail/index/4758
え?とうもろこしを生でまるかじり!?美瑛でトウキビ収穫体験
URL:https://h-takarajima.com/detail/index/4779
“ふら~り 冬さんぽ” ~美瑛の丘で絶景スノーシュー体験~
リンク https://h-takarajima.com/detail/index/4895
※冬季限定プログラムです。受付開始をお待ちください
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