北海道百科事典

2023/01/10

【北海道の食文化】地域ごとの自然が生んだ郷土料理の歴史を学ぼう!

北海道の広さは、なんと国土のおよそ22%!周囲は海に囲まれ、広大な土地の半分を山地が占めています。温帯気候と亜寒帯気候に含まれているのが特徴的。低湿・冷涼で積雪期間がとても長く、春になる頃にやっと雪解けを迎えます。

北海道では地域の特性に適した食文化が生まれてきました。どんな郷土料理があるのか、道央、道北、道南、道東と4つの地域ごとにご紹介していきます。

北海道の食文化はどうやって生まれたの?開拓と近代化がポイント

北海道の郷土料理を食べたことがあるけれど、ルーツを知らないという人は多いのではないでしょうか?どうやって食文化が生まれたのか紐解くために、まずは北海道がどんな場所か歴史を振り返っていきます。

北海道はどんなところ?環境や気候をチェック!

北海道は83,424平方キロメートルもの広大な土地を持ち、その半分を山地が占めています。周囲は太平洋、日本海、オホーツク海と3つの海が広がる自然豊かな土地です。

北海道は温帯気候の北限に位置しながら、亜寒帯気候の南限にも位置しています。低湿、冷涼で積雪期間が長く、春先まで雪が残る地域がほとんどです。

「蝦夷地」から「北海道」へ

北海道はかつて「蝦夷地(えぞち)」と呼ばれていて、先住民族のアイヌの人々が暮らしていました。鎌倉時代に大和民族の和人が本州から進出して交易がスタート。16世紀の半ばには北海道南部を「和人地」として和人の居住地に定め、江戸時代には松前藩が置かれました。

明治時代に入ると歴史が大きく動きます。北海道の開拓とともに「蝦夷地」から「北海道」に改称されたのです。全国各地から人々が移り住み、近代化が進んでいきます。

農業の成功と食文化の誕生!

近代化によって、四季が明確な北海道の気候条件に対応できる欧米の農業技術を導入。さらに土地改良などを重ねることで、北海道は国内トップの食料供給地域へと発展したのです。
現代では、じゃがいもや小麦、小豆など数多くの品目でトップレベルの生産量を誇ります。北海道を代表する食文化が各地で生まれて、「ジンギスカン」「ザンギ」「石狩鍋」といった郷土料理は全国でも知られるようになりました!

「道央地域」の赤飯は甘納豆で炊く!札幌から北海道各地へ広がる食文化

道央地域は「空知(そらち)」「石狩」「後志(しりべし)」「胆振(いぶり)」「日高」の5エリアに分かれます。

「空知」は岩見沢市や美唄(びばい)市など、「石狩」は札幌市や千歳市、石狩市などです。「後志」は小樽市や倶知安町(くっちゃんちょう)など、「胆振」は室蘭市や苫小牧市、登別市が含まれます。「日高」に該当するのは日高町や平取町(びらとりちょう)です。

道央地域の特徴と食文化

道央地域では、石狩平野を中心に稲作地帯が形成されています。札幌市の近郊や空知の南部では野菜の生産が盛んで、農畜産業もおこなわれているのが特徴です。

特別な日に食べるご飯料理の「赤飯」は、もち米と小豆を混ぜるのが一般的。しかし、道央地域では小豆ではなく甘納豆を使います。赤い色を食紅で表現したピンク色の赤飯が生まれ、道央から他の地域へ広がっていきました。

道央地域で生まれた郷土料理

漁師町である石狩地方では、「石狩鍋」とともに「鮭のチャンチャン焼き」が有名です。鮭と季節野菜をバターとともに蒸し焼きにして、味噌や砂糖、みりん、酒で味付けします。

空知に含まれる美唄市で生まれたのが、現在でも家庭料理で親しまれている「美唄のとりめし」です。北海道の開拓が本格化した明治時代に生まれたとされて、農場主が小作人を奨励するために振る舞いました。

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海に挟まれた「道北地域」の食文化は?漁師町ならではの郷土料理

道北地域は「上川(かみかわ)」「留萌(るもい)」「宗谷(そうや)」「オホーツク」の4エリアに分かれます。

「上川」は、旭川市や富良野市など、「留萌」は留萌市 や増毛町(ましけちょう)などが含まれます。「宗谷」は稚内市や枝幸町(えさしちょう) など、「オホーツク」に含まれるのは北見市 や網走市、紋別市などです。

道北地域の特徴と食文化

北海道の北端に位置する道北地域は、日本海とオホーツク海に挟まれています。稚内市の宗谷岬には「日本最北端の地の碑」が建ち、天気がいい日はロシアのサハリン島が見えることも。

日本海に面した留萌は、江戸末期から昭和の半ばまでニシン漁が栄えた漁師町です。内臓を取り除いて天日干しに加工した「身欠きニシン」は日本海から現在の福井県に渡り、にしんそばなど各地の郷土料理に影響を与えました。

道北地域で生まれた郷土料理

枝幸町はオホーツク海に面しており、毛ガニの産地として知られています。道北地域で食べられているのが郷土料理の「てっぽう汁」。ぶつ切りのカニが入った味噌汁で、漁師町ならではの味わいです。

北海道で食べられている「三平汁」は、鮭やニシンを野菜と煮込んだ郷土料理。塩漬けした鮭を使うのが一般的ですが、道北地域では塩ダラを使うこともあります。また、「ジンギスカン」は地域によって食べ方が異なる北海道民のソウルフード。道北地域の旭川市では、あらかじめ味を付けてから食べるのが主流です。

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「道南地域」は農作物が豊富!松前町から継承される保存食とは?

道南地域は「渡島(おしま)」「檜山(ひやま)」の2エリアに分かれます。

「渡島」は函館市や北斗市、松前町など、「檜山」には、江差町(えさしちょう)や上ノ国町(かみのくにちょう)、厚沢部町(あっさぶちょう)などが含まれます。

道南地域の特徴と食文化

慶長9年に松前藩が成立し、松前町には北海道で唯一の城下町が置かれました。江戸時代になると大阪へ物資を運ぶ船の寄港地になり、現在では日本遺産に認定されています。安政6年に函館港が開港すると、国内初の外国貿易港として栄えました。

道南は北海道の中でも積雪が少ないことから、農作物の生産を早い時期から着手できる地域です。南北に長い地域ではさまざまな農作物が栽培されており、高い生産量をあげています。

道南地域で生まれた郷土料理

松前町で生まれて道南の各地に継承されたのが「松前漬」です。イカと昆布を醤油で煮込んだ保存食で、かつては数の子を加えて塩漬けしていたことも。現在でもごはんのおかずや酒の肴の珍味として親しまれています。

函館や渡島地方では郷土料理の「いかめし」が生まれました。函館本線の森駅で考案したのがはじまりとされ、今でも人気の駅弁です。また、北海道の他全域に広がっている郷土菓子の「べこ餅」は、5月の端午の節句に食べる家庭が多く見られます。

「道東地域」の驚異的な食料自給率!十勝開拓が生んだ豚肉料理

道東地域は「十勝」「釧路」「根室」の3エリアに分かれます。

「十勝」は帯広市や音更町(おとふけちょう)、幕別町(まくべつちょう)などが含まれます。 「釧路」は釧路市や釧路町、「根室」に含まれるのは根室市や中標津町(なかしべつちょう)などです。

道東地域の特徴と食文化

道東は、世界自然遺産に登録されている「知床(しれとこ)」や「釧路湿原国立公園」、「阿寒摩周国立公園」といった雄大な自然を感じられる地域です。

帯広を中心とした十勝地方では、大規模な農業を展開。畑作や酪農がおこなわれており、北海道の耕地面積の約20%に及ぶ耕作面積を有しています。食料自給率は驚きの1240%!およそ418万人分もの食糧をまかなっている計算です。

道東地域で生まれた郷土料理

道東地域からは多くの郷土料理が生まれています。B級グルメで有名な「豚丼」も帯広が発祥の地です。帯広地方は明治時代の末ごろから養豚業が盛んでした。昭和初期に帯広市内の食堂で発案されたのが「豚丼」です。うなぎの蒲焼き風のタレを、豚肉の炭火焼にかけたのがきっかけだそうです。

また、北海道の代表的なB級グルメとして親しまれている「ザンギ」は、昭和30年ごろの道東地方がルーツとされています。釧路市の末広歓楽街にあった鶏料理店で、ぶつ切りにした鶏を唐揚げにしたのがはじまりです。中国料理で鶏の唐揚げを「炸鶏(ザーチー/ザーギー)」といい、運が付くように願いを込めて「ン」を間につけたのが名前の由来。

現在では、タコやサケに衣を付けて揚げたものも「タコザンギ」や「サケザンギ」と呼ばれています。

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北海道の食文化を知って郷土料理を満喫しよう!

今回は北海道の食文化と郷土料理についてご紹介しました。広大な北海道では、地域の気候や特性を生かして農業や漁業、畜産などがおこなわれています。

独自の郷土料理も生まれているので、北海道を訪れるときは地域の食文化に触れるのもおすすめです。地元で愛されるご当地グルメも、背景を知ることでより美味しく感じられそうですね。